2025.11.21

【解剖学】を施術に落とし込みたいセラピスト必見! 筋肉を触って理解するセラピストのためのパルペーション(触察)方法!~僧帽筋編~

こんにちは。MTI(マッサージセラピー・インスティテュート)学長の國分利江子です。

今回は、セラピストにとって重要なスキルである「パルペーション(触察)」について、僧帽筋を例に詳しく解説いたします。解剖学の知識を実際の施術に活かしたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

ぜひ動画も併せてご覧ください。

パルペーション(触察)とは

パルペーションとは触察のことで、まず骨の位置を探り、その骨の位置から筋肉の起始部・停止部を見つけ、筋肉全体の場所を把握します。そして、それぞれの線維の感触を確認していく作業です。

僧帽筋は、筋解剖学の図でご覧いただいたように、背中の中央からやや下のあたり、胸椎12番から後頭部まで広がっています。

僧帽筋の起始部を探る

後頭骨と上項線の確認

右側を例にご説明します。後頭骨は髪の毛に隠れていますが、頭蓋骨の頸椎から上がっていった下側のラインから少し上のところに位置しています。

実は、一番下側のラインは筋膜に隠れてほとんど手で触ることができません。そのため、後頭骨の中で骨の感触がするラインが上項線であると理解していただくとよいでしょう。

頸椎・胸椎の棘突起を辿る

上項線の中央部から頸椎の棘突起を辿っていきます。C7(第7頸椎)は背中でボコボコと大きく突出している部分です。そこから胸椎の棘突起をずっと探っていき、12番の場所を特定します。

12番の場所を探す方法として、下部線維をはっきりさせる方法があります。クライアントに「ウルトラマンが飛ぶような感じ」で腕をキュッと後ろに引く動きをしていただくと、肩甲骨から胸椎の棘突起までうっすらと走るラインが見えてきます。これが僧帽筋の起始部です。

僧帽筋の停止部を探る

鎖骨外側1/3の確認

停止部は鎖骨の外側1/3です。後ろ側からアプローチしていきましょう。

まず肩甲骨を確認します。肩甲骨の内側縁を辿っていくと、上角が見つかり、肩甲骨の一番上のラインがはっきりします。肩甲棘、肩峰、そして鎖骨がV字型に出会っている感じで、鎖骨の外側1/3のところまでが停止部になります。

上部線維のパルペーション

線維の端を見つける

上項線の端が上部線維の始まる一番端になります。そこからよく見ていくと、首のところでカクン、カクンと角張った感じのポイントがあります。これが僧帽筋の上部線維の一番端です。

この端のところを指で、下部線維を探したのと同じように外側から押しながら滑らせると、確実にラインがあることが皮膚の下にはっきり見て取れます。そこから鎖骨の外側1/3までのラインを目視で引いてみてください。

個人差への対応

人によって皮膚の厚みや脂肪の量、筋肉の緊張度合いが異なるため、見やすい方と見にくい方がいます。パルペーションしても分かりにくい方の場合でも、ラインを目視で引いて、筋解剖学の起始部・停止部の知識と合わせて場所を想定することがとても大切です。

柔らかく触れただけでは場所が特定しにくい場合もありますが、しっかりと圧を入れて触っていくと、僧帽筋の外側のラインを確認できます。筋肉のやや外側から端の位置を指で引っかけて辿っていくと、確実に鎖骨の外側1/3に停止していることが分かります。

鎖骨上の厚みの確認

鎖骨のラインを確認すると、ある位置まではくぼみがあり、そこから厚みが出てきます。僧帽筋が走ってきて始まっているこの厚みの部分、くぼみが消えて厚みになっている部分が、僧帽筋の鎖骨側の始まりの位置です。

線維の走行をパルペーションする

下部線維から中部線維へ

触感として僧帽筋の下部線維を探っていく際は、線維を琴の弦をつまびくように、線維に対して90度の方向でパルペーションします。

肩甲骨の形状によって(例えば肩甲骨の下部がやや上がっている状態、つまり前に引っ張られている状態など)、パルペーションのしやすさが変わりますが、これについては別の機会にお話しします。

横に走っている線維は鎖骨から来て、まず外側についていきます。そしてだんだんとこのラインの外側についていた線維が少しずつ中央に寄ってきて、内側縁の方に走っていきます。下部線維になると内側縁の近くから一番端の内側縁の方に線維が繋がっていきます。

内側縁の厚み

内側縁を触っていくと、下部線維が全て集中して繋がっていく肩甲棘付近は、僧帽筋の付着部が重なって集まっているため、厚みがある感じになります。

僧帽筋の特徴的な構造

背面は一枚の皮のような状態

僧帽筋をパルペーションしていく際に、特徴的なことが1つあります。僧帽筋は背面では一枚の皮のような状態になっていますが、肩の部分には独特の構造があります。

肩のトップはU字型構造

上項線から斜めに横切って鎖骨の外側1/3に停止し、そのまま外側に向かっている僧帽筋は、背中側では一枚の皮のような状態ですが、肩のトップのところを見るとU字型になっています。

つまり肩のトップは、僧帽筋が前側と背中側とが2枚U字型に集まっているため、非常に厚みがあります。また、肩のトップは誰でも緊張しやすい部位です。そのため、僧帽筋の上部線維は下部線維よりも、触ってみると3〜4倍ほどの厚みになっていることが多いです。

まとめ

今回は僧帽筋のパルペーション方法について解説いたしました。

パルペーションの基本は、まず骨の位置を探り、起始部・停止部を確認して筋肉全体の場所を把握することです。僧帽筋は後頭骨の上項線から胸椎12番まで起始し、鎖骨外側1/3と肩甲棘に停止する大きな筋肉です。

特に覚えておいていただきたいポイントは、肩のトップ部分がU字型構造になっており、前側と背中側の2枚が集まっているため厚みがあること、そして上部線維は緊張しやすく下部線維の3〜4倍の厚みになりやすいということです。

解剖学の知識と実際のパルペーションを組み合わせることで、より効果的な施術が可能になります。ぜひ実践で活用してみてください。


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