こんこんにちは。MTI(マッサージセラピー・インスティテュート)学長の國分利江子です。
前回の筋解剖学編に続き、今回は肩甲挙筋に対する実際の施術テクニックについて詳しく解説いたします。
ぜひ動画も併せてご覧ください。
現場で、すぐに使える 肩甲挙筋 4つのアプローチ
基本的な施術の流れ
MTIのオイルマッサージでは、一つ一つの筋肉をしっかりと理解し、それを施術で改善していくことを行います。
肩甲挙筋へのアプローチでは、まず全体をしっかりと緩めて温める作業から始めます。
テクニック1:拳を使った全体的なアプローチ
最初のストロークは全体をしっかりと緩め、温める作業です。
手順
- 軽くオイルをつける
- 拳を使い、横突起のところにしっかりと押し付ける
- ゆっくりと肩甲骨の上角に向かってしっかりと圧をかける
重要なポイント
この時、拳にも腕にも手首にも全く力が入っていないことが重要です。手首や拳に力みが入ると、とても嫌な圧になってしまいます。
このような適切な拳や手首・腕を作るために、スクールではボディメカニクスを教えています。
テクニック2:拇指のストリッピング
筋肉が全体的に温まったら、今度はピンポイントでこの緊張を緩める、集中的に緩めるやり方に移ります。
最も適するのが拇指のストリッピングです。
手順
- 横突起の位置を見極めて圧を入れる
- 自然に圧の量を増やしながら停止部である上角の方に向かって進む
- 触察で場所をしっかりと確認することが重要
効果を高める工夫
最後のストリッピングの後に、拳のコンプレッションでしばらく時間を取ったり、停止部だけに拇指のコンプレッションを何回か施すととても効果的です。
正しいボディメカニクス
拳を使う時のボディメカニクス
- 拳を軽く握り、平らな面を使う
- 左側の肩を施術する場合は右側の方向(対角線上の位置)に立つ
- 使う拳が右手なら左足をしっかり使い、身体としても対角線上に力の作用が及ぶよう身体を使う
- 圧をかけて後ろ足で踏み出しながら腰の位置を移動させることで、拳が少しずつ停止部に近づく
注意点
自分の拳の骨とクライアントの肩甲骨の骨がぶつからない位置まで調整してください。力みがなく、身体全体のボディメカニクスがしっかりしていると、クライアント様も心地よく圧を受けることができます。
テクニック3:起始部へのフリクション
横突起の付着部にしっかりと四指を置き、一指だけだと力が入りすぎてしまうのでサポートを入れて、フリクションを行います。
骨に当てて骨に付着している部分の骨を上手く利用し、骨は絶対に押さないようにしながら、骨を利用してフリクションすると肩甲挙筋の緊張を緩めるのに非常に効果的な結果が得られます。
テクニック4:仰向けでの拇指ストリッピング
仰向けでも拇指のストリッピングによる施術を行うことができます。
手順
- 起始部の横突起1番目から4番目の位置を確認
- 肩甲骨の内側縁から上角にかけての位置を確認
- 停止部の位置をきちんと把握
- 拇指で筋肉の線維を追いかけながらストリッピングを行う
重要なポイント
僧帽筋が鎖骨の外側三分の一から後頭骨上項線に向かって被さってくるため、頸椎の横突起からずっと圧を入れていった時に、僧帽筋の下に潜りながら肩甲骨の上角を探すのが実際のプロのテクニックです。
頭部の扱い方
頭部を上手く扱うために、反対側の手をカップのようにして首の角度を調整し横突起を露出しやすくしたり、静かにマッサージテーブルの上に置いて普通のポジションで圧をかけたりします。
クライアントの首の形状やマッサージテーブルとの相性により、指をどの角度で、どの位置から持っていくと圧が一番入りやすいかを計算してやり方を決めます。
上級者のテクニック
圧の質について
指に力を入れる方が多いですが、そうするととても嫌な圧になります。実際の圧は、座っている足の裏を床にくっけて、そこで作った圧をここに届けるというような感じなのです。
決して揉みほぐしの感じでぐいぐいと行うわけではありません。
クライアントの状態に合わせた調整
クライアントの皮膚や筋肉の状態、身体の形状や筋肉の緊張の度合い、皮膚の質感などによって、圧をどのように入れていくかを最後の調整をしながら効果的に圧が入るようにしていきます。
これは多くの施術経験を積んできたからこそハンドリングできる上級者のやり方です。
施術の基礎固めの重要性
オイルマッサージで実力をつけたい方は、まず基礎の基礎から筋解剖学を学び、触察でしっかりその実際の位置を見つけて、筋肉に効果的なディープティシューのマッサージセラピーのストロークの基本を使うことが大切です。
そこにボディメカニクスを組み合わせることによって:
・自分の身体が疲れない
・職業病にならない
・何歳になっても施術ができる
・圧の質感が最高のものになる
これらが実現できます。
そうして経験を積んでいくと、最終的にクライアントの状況に合わせて、さらに効果的な細かいハンドリングができるようになるのです。
まとめ
今回は肩甲挙筋を例にとって、筋解剖学をどう施術に落とし込んでいくかということを解説しました。
正しい身体の使い方であるボディメカニクスは、セラピストの方が身体を疲れさせず、深い圧でも身体を痛めないで、しかも圧の質感が上がるような、そういうことにとても効果的です。
筋解剖学と触察での場所確認、そしてしっかりとしたオイルマッサージのストロークを組み合わせることで、筋解剖学と施術が繋がったしっかり効果のある施術になります。
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私が学長を務めるMTI(マッサージセラピー・インスティテュート)では、アメリカのニューヨークにあるスウェディッシュ・インスティテュートで学んだマッサージセラピーを教えています。これは運動療法から発展して機能改善を目的としたアメリカ発のオイルマッサージです。このスクールには、不調の原因を理解し、お客様一人一人に合わせた質の高い施術をしたいという方が入学されています。
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