こんにちは。MTI(マッサージセラピー・インスティテュート)学長の國分利江子です。
今日は現場ですぐ使える『筋解剖学の講座』ということで大胸筋を扱います。
ぜひ動画も併せてご覧ください。
巻き肩・肩こり解消 大胸筋 オイルマッサージテクニック
なぜ肩こりが戻ってしまうのか?
「肩こりで辛い」というお客様に対して、一生懸命に首や肩をほぐしているのに結局またすぐに戻ってしまった。そんな経験ありませんか?
ただ硬い所をやみくもにほぐしても、効果は一時的です。
肩こりを根本的に改善するためには、その方の姿勢を分析して、その方の固有の凝り、あるいは張りの理由を突き止めて、そしてその方にあった施術内容を構築する必要があります。
これをアセスメントと言います。
デスクワークによる巻き肩への効果的な施術方法
今回はデスクワークで巻き肩になったお客様にとって有効な施術方法をご紹介します。是非明日から皆さんの施術に取り入れてください。
基本的な施術の流れ
Step1:全体の準備 まずは大胸筋全体に向けて掌で軽くエフルラージュを行います。
Step2:拳によるアプローチ 胸に拳を使うことに驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、大胸筋全体の緊張を緩めるためにはとても効果的です。力まずにソフトに行うのがプロの技です。
Step3:筋線維の交差部分への集中ケア 停止部付近で上部と下部の筋肉が交差する部分に、スクウィージングを使います。筋肉線維をしっかり見定めて、筋線維に対して90度の角度で圧を入れると、この緊張しやすい部分に効果的にアプローチできます。
Step4:停止部への仕上げ 停止部に拳のエフルラージュを行い、しっかり圧を入れて筋肉を緩めます。最後に拇指のストリッピングで仕上げを行います。ここでは指が滑らないよう、筋線維をしっかり捉えて圧を下に入れることが重要です。
巻き肩が肩こりの原因になる理由
肩こりの原因は様々ですが、巻き肩もその原因の1つです。
巻き肩というのは肩が前に丸まった感じになる、つまり内旋している状態なんです。
これは肩の中でも上腕骨の上の方ですね、これが前に出て丸まっている状態なので、肩に力が入ると、どんどん硬くなっていく姿勢になります。
そしてこの状態だと、背中の筋肉は常に引っ張られているために、背筋を伸ばしたり肩甲骨を背中の中心に寄せる力は弱まっていきます。
巻き肩の姿勢はそうするとさらにひどくなって、この状態が続くと、広い範囲での筋肉を巻き込んだ肩こりになっていってしまうんです。
それから、胸が内側に入っていくので、呼吸が浅くなってしまうという問題も出てきます。
大胸筋の構造を理解しよう
大胸筋が巻き肩に与える影響
大胸筋は3つの部分に分かれています:
・上部線維:鎖骨の内側半分から上腕骨の大結節稜へ
・中部線維:胸骨部から横方向に走行
・下部線維:下から上がってきて上腕骨へ
これらの線維は肩関節で交差することで、大胸筋の機能とパフォーマンスが向上します。
なぜ大胸筋が巻き肩の原因になるのか
大胸筋は肩関節を前側からまたいでいるため、この筋肉が緊張して収縮すると短くなります。その結果、上腕骨の上部が内側に内旋して引っ張られ、巻き肩の姿勢になってしまうのです。
大胸筋を緩める効果的なストローク3選
1. 拳のエフルラージュ – 全体を効果的に緩める技術
基本的な使い方 拳を軽く握って大胸筋全体を緩めるストロークです。
重要なポイント
安全面の注意
・大胸筋上部は筋肉が薄く、下には肋骨、そばには鎖骨があります
・拳を固く握りすぎない
・力任せに圧をかけない
・ソフトランディングで筋肉の厚みに合わせて圧を調整
正しい位置取り
・胸骨柄のぎりぎりまで拳を持っていく
・骨には直接圧をかけず、筋肉をしっかり捉える
プロの技術 – 圧の移動方法 最も重要なのは身体全体の使い方です:
- 軽く拳を握り、前腕と上腕を真っすぐにして圧をかける
- 体重を完璧にコントロールして圧を作る
- 手首や腕を動かさず、圧に導かれて自然に移動させる
- 肋骨のカーブに沿って拳が自然に移動する
この技術により、クライアントは心地よい感覚を得られ、筋肉が深部から緩んでいきます。
2. スクウィージング – 筋肉の交差部分への集中アプローチ
なぜ重要なのか 大胸筋の各線維が肩の前で交差し、三角筋とも重なる部分は筋肉同士の癒着が起こりやすい箇所です。
実践のポイント
・触察により大胸筋の筋腹をしっかり把握する
・ゆっくりとスクウィーズを行う
・クライアントの筋肉の状態に合わせて姿勢を調整する
・皮膚や脂肪ではなく、筋肉線維をしっかり捉える
3. 停止部への拳のエフルラージュと拇指のストリッピング
停止部への効果的なアプローチ 筋腹全体ではなく、上腕骨の停止部に集中したアプローチです。
ストレッチを加えた施術
・上腕骨を肩関節で外旋させる(肘での外旋は効果なし
・大胸筋をストレッチしながら停止部に向けて移動
・筋肉線維に対して90度の角度で圧を入れる
身体の使い方 手首や腕は固定し、後ろ足で作った圧を腰を使って移動させることで、最高に心地よい圧を作ります。
仕上げの拇指ストリッピング 拳のエフルラージュの後に拇指のストリッピングを加えることで、筋肉が最高に緩み、巻き肩の改善に非常に効果的です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は大胸筋を例にとって、筋解剖学と、それを施術に落とす方法をお伝えしました。
肩こりや巻き肩の根本的な改善には、単に硬い部分をほぐすだけでなく、姿勢を分析し、その方に合ったアセスメントに基づいた施術が重要です。特に大胸筋へのアプローチは、デスクワークによる巻き肩の改善に非常に効果的です。
今回ご紹介した3つのストローク(拳のエフルラージュ、スクウィージング、拇指のストリッピング)を正しい技術で実践することで、クライアントの深層筋まで効果的にアプローチできるでしょう。
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私が学長を務めるMTI(マッサージセラピー・インスティテュート)では、アメリカのニューヨークにあるスウェディッシュ・インスティテュートで学んだマッサージセラピーを教えています。これは運動療法から発展して機能改善を目的としたアメリカ発のオイルマッサージです。このスクールには、不調の原因を理解し、お客様一人一人に合わせた質の高い施術をしたいという方が入学されています。
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