こんにちは。MTI(マッサージセラピー・インスティテュート)学長の國分利江子です。
私はこれまで、専門誌『セラピスト』で施術についての記事を連載してきました。今回は、その中から2020年6月号に掲載したケーススタディを取り上げ、前編・後編の2回に分けて記事の内容を解説します。前編では、クライアントの状況をどのように読み解き、施術プランを立てたのかをご紹介します。ぜひ参考にして、ご自身の施術に活かしてください。
ぜひ動画も併せてご覧ください。
今回のケース:庭仕事で慢性的な肩こりに悩む女性
今回ご紹介するのは、2020年6月号の40ページから始まる記事のうち、42ページに掲載したケーススタディです。
クライアントは、日頃から庭仕事などを続けてこられた女性です。慢性的なひどい肩こりに悩まれており、この方への実際の施術例をまとめたものになります。
セラピストに役立つ「S.O.A.P.」とは
ここでまずご説明したいのが、セラピストにとって非常に役に立つ「S.O.A.P.」という作業です。
S.O.A.P.は、次の4つの内容で構成されています。
- S(Subjective):主訴
- O(Objective):観察
- A(Assessment):分析・見立て
- P(Plan):施術プラン
日本のリラクゼーションセラピストの多くは、決まった型に沿った施術をされていると思います。そのため、こうした作業を行う機会はあまりないかもしれません。
なぜS.O.A.P.が必要なのか
では、S.O.A.P.は何のためにあるのでしょうか。
今回のクライアントの症状は肩こりです。しかし、ひと口に肩こりといっても、100人いれば100通りの理由があり、状況もそれぞれ異なります。
医師は、来院した患者さんを診察し、治療方針を立てたうえで治療にあたります。マッサージセラピーでは、それと同じような方法を取ることができます。それがS.O.A.P.です。
もちろん、私たちは医療従事者ではありませんので、あくまでリラクゼーションの範囲で行います。そのうえで、目の前のクライアントの状況を筋解剖学に基づいて捉え、姿勢の見立てを行います。そうすることで、その方の症状をきちんと理解・分析し、どのような施術が効果的なのかを判断して施術プランを立てることができます。この一連の流れがS.O.A.P.です。
これができるようになると、リラクゼーションの仕事の中で最もベーシックな「決まった型の施術」から一歩進み、最も医療に近いセラピーとしての施術ができるようになります。
S(主訴)とO(観察)で状況を把握する
今回のケースに当てはめてみましょう。
まず、「慢性的な肩こりがある」というのが、S(Subjective)、つまりクライアントご本人の主訴です。
次のO(Objective)では、セラピストがプロフェッショナルとしての知識を使い、客観的に状況を把握します。クライアントのお話だけでは情報が足りないため、質問を重ねて必要な情報を引き出し、クライアントが今どのような状況にあるのかを把握していきます。
前かがみの作業が生んだ「Cライン」の姿勢
庭仕事や畑仕事では、背中を丸めて前かがみになる姿勢が多くなります。さらに、手もたくさん使います。
前かがみになると背中が丸まり、その流れで骨盤が後傾してしまいます。本来の身体は、頭部から仙骨にかけてS字が2つ続くような、しなやかなラインを描いています。ところがこの方の場合は、完全に「Cライン」になっていました。この状態で、長時間作業を続けていたのです。
首と胸の筋肉で姿勢を支えていた
前かがみの姿勢では、頭が前に落ちすぎないよう、身体を持ち上げようとする力が働きます。このとき、背筋と腹筋がしっかり働いていれば、上半身を自然に持ち上げた状態で作業できたはずです。
しかしこの方の場合、腹筋と背筋があまり働いていませんでした。そこで、頭が落ちすぎるのを防ぐために、首や胸周りの筋肉に力を入れ、身体の前側で姿勢を保つようにしていたのです。
こうしたことが、セラピストがクライアントにさまざまなお話をうかがう中で、少しずつ分かってきました。
今回の施術プラン:首から胸の緊張にフォーカス
この方の姿勢には、上半身と下半身の間、つまり腰の部分での大きな屈曲が見られます。これには大腰筋などが関わっています。
ただし今回の施術プランでは、首から胸のあたりの緊張にフォーカスし、60分の施術を構成しました。
まとめ
前編では、セラピスト誌2020年6月号に掲載したケーススタディをもとに、慢性的な首・肩こりに悩むクライアントの状況をS.O.A.P.で読み解き、施術プランを立てるまでの流れをご紹介しました。
同じ肩こりでも、その原因や状況は一人ひとり異なります。主訴を聞くだけでなく、質問を通して生活習慣や姿勢の背景を引き出し、筋解剖学に基づいて見立てを行うことで、その方に本当に必要な施術が見えてきます。今回のクライアントは、前かがみの作業によるCラインの姿勢を、首や胸周りの筋肉で支え続けていたことが、肩こりの大きな要因となっていました。
実はこのクライアントには、とても興味深い変化がありました。肩こりの改善を目的とした施術だったにもかかわらず、声が出やすくなり、コンプレックスだったかすれ声がなくなって、歌うことが楽しくなったのです。後編では、この施術のポイントと、声が変わった秘密について、胸鎖乳突筋を中心に詳しくご紹介します。どうぞお楽しみに。
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私が学長を務めるMTI(マッサージセラピー・インスティテュート)では、アメリカのニューヨークにあるスウェディッシュ・インスティテュートで学んだマッサージセラピーを教えています。これは運動療法から発展して機能改善を目的としたアメリカ発のオイルマッサージです。このスクールには、不調の原因を理解し、お客様一人一人に合わせた質の高い施術をしたいという方が入学されています。
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