2022.01.10

セラピストとは ~はじまりの歴史を紐解く~

皆さん、こんにちは。
マッサージセラピーインスティテュート学長の國分利江子です。

海外で「セラピスト」というと「psychotherapist/ サイコセラピスト:心理療法士」を指します。

日本でこれを聞いた時に、意外だと感じる方が多いのではないかと思います。
何故ならば、日本で「セラピスト」というと、一般的に「アロマ」か「オイルマッサージ」のセラピストを思い描く方が大半なのではないでしょうか。

この現状には、日本にセラピーが輸入された経緯と、日本のセラピスト業界の問題点が反映されているように思いま
す。そこで、日本において、最高レベルのセラピスト教育を行うスクール「マッサージセラピー・インスティテュート(MTI)」の記念すべきブログ第一弾では、まず、この基本的なことについてご説明しようと思います。


| 医学の歴史

セラピストという職業の成り立ちを辿るためには、まずは、医学の歴史を紐解く必要があります。

「Medicine /医学」の起源は古代ギリシャのヒポクラテスにあり、今でも、医学生は『ヒポクラテスの誓い』を立てて医師となります。

それが古代ローマのガレノスやアリストテレスに継承され、様々な伝統医療の知識をまとめた上で、哲学的な側面と科学的な考えを融合して「医学」がつくられました。当時はキリスト教の影響もあり、外科的な手術は含
まれていませんでしたが、ルネサンス期以降に実証的な研究が始まって、現在知られているような近代科学の一部としての医学が形作られました。

これはやがて、東洋の伝統医学と比較されて、「Western Medicine/ ウエスタン メディスン:西洋医学」とも呼ばれるようになりました。
西洋においては、西洋医学が伝統医学であるという事実は、東洋人からするとちょっと面白いですね。


さて、この段階で。医学からは、古代ギリシャでヒポクラテスが提唱していたような、人や人体への深淵な理解は損なわれており、「肉体」の部分にのみ焦点を絞った内容となっていました。


| ”こころ”を扱う医療の誕生

やがて、西洋医学の延長線上として、人の精神について扱う分野が生まれました。

これがまさに、「心」の分野で医学を開拓する先駆けとなリました。
しかし、日本では「Psychiatrist/ サイカイアトリスト:精神科医」と「Psychologist/ サイコロジスト:心理学者」が混同されているようにも感じますので、少し整理してみましょう。

簡単にこれらの違いを説明すると、
「Psychiatrist/ サイカイアトリスト:精神科医」は医師です。
主に、精神障害や依存症などを専門に扱い、医師としての資格によって薬や電気治療などを処方することができます。「心」ではなく「脳」に起きている問題を専門とする職種です。

「Psychologist/ サイコロジスト:心理学者」はそれぞれの国によって資格認定のレベルが異なりますが、世界一般的には心理学の4年制大学で学士号を取得し、その後、心理学の修士号か博士号を取得します。
更にインターンなどの実習経験や臨床経験を経て、資格試験を受けることができます。

心理学者は基礎系心理学・実験心理学・応用心理学など、人間の心理を研究し、研究だけに留まらずに、精神分析医や臨床心理医として医療の現場での仕事も行います。

人というものの「肉体」だけが重視されていた時代に、「精神」「心理」というものへと認識が広がったのは、有名なフロイトやユングによる功績が大きいいと讃えられています。

ちなみに、
フロイトは「Neurologist/ ニューロロジスト:神経科医」で「Psychoanalyst/ サイコアナリスト:精神分析医」でもあり、夢の分析で良く知られていますね。
ユングは「Psychiatrist/ サイカイアトリスト:精神科医」で「Psychoanalyst/ サイコアナリスト:精神分析医」でもあって、超心理学や東洋の道教(タオ)などへも興味を広げたことが、後の心理学の方向性へと大きく影響を与えました。
それぞれの基盤には共通している点がありながらも、専門分野によってプローチの違いがあることも興味深いですね。

そして更に、そこから「psychotherapist/ サイコセラピスト:心理療法士」が生まれました。
心理療法士は、医師ではなく、臨床をもとにした分野なので薬などを処方することはできません。

心理療法士は、物理的・科学的手段(薬や電気治療など)を用いずに、対話やトレーニングなどを通して、認知・情緒・行動など心に関連する分野に変化や変容をもたらすために、体系化された理論や手法によるアプローチをする、新しい領域を開拓した職業なのです。


|「セラピスト」のはじまり

さて・・・ようやくサイコセラピストまでたどり着きましたね(笑)。


このブログの始めでお伝えしましたが、セラピー先進国アメリカで「セラピスト」という職業が生まれた時、それは
「psychotherapist/ サイコセラピスト:心理療法士」を指しました。それが今でも記憶に刻まれ、海外で、一般的に「セラピスト」というと「サイコセラピスト」を意味するのです。


サイコセラピストによって、「セラピスト」という職業が誕生したわけですが、
このセラピストという職業に現れた特徴とは、なんなのでしょうか?

先にもお話ししましたが、サイコセラピストは、人の精神や心への治療方法として、薬物や電気治療などを一切使わないで、人間らしい側面を大切に扱うアプローチを開発したことが、最も大きな特徴のように思います。

ですから、近代医学の歴史の中で、心身の治療において、自然治療へ向かう流れを作ったのが、この「セラピスト」という職業の始まりであると、私は考えます。


そして、そこから・・・
・言葉を使う:サイコセラピー (サイコセラピスト)
・言葉の表現の更に深い領域からの:アートセラピー (アートセラピスト)
・色によって情感を表現する:カラーセラピー (カラーセラピスト)
・音によって感情や情動を解放する:サウンドセラピー (サウンドセラピスト)
・音楽の記憶によって心をひらく:ミュージックセラピー (ミュージックセラピスト)
・踊りによって身体全体の情感を動かす:ダンスセラピー (ダンスセラピスト)
・ハーブや精油など植物の成分や香りを使う:アロマセラピー (アロマセラピスト)

そして・・・
・身体の感覚に深くアプローチする:マッサージセラピー (マッサージセラピスト)


などの、様々なセラピー(療法) が生まれ、それぞれの専門のセラピストが誕生しました。


| 日本の「セラピスト」がリラクゼーション領域に括られる理由

さて、はじめにあげた疑問に戻りましょう・・・

何故、日本において「セラピスト」というイメージが、アロマやオイルマッサージに象徴されるのか・・・

これはあくまで私の想像ですが、セラピストという言葉が輸入され一般にも知られるようになった時期に、

① 日本においては、サイコセラピストの仕事が欧米のようには確立されていなかったこと。
② スリラー映画などの影響で「サイコ」という言葉にあまり良いイメージがなかったこと

これらによって、日本では「サイコセラピスト」ではなく「心理療法士」という言葉が好んで使われていったのではないかと思います。


そして次に、セラピーの分野で、本格的に日本に輸入された職種がアロマセラピストでした。

アロマセラピーの美しい印象によって、その象徴的な「香り」と、肌に触れて行う「オイルマッサージ」とがイメージとして定着して、日本では「セラピスト」というと、アロマかオイルマッサージというイメージが定着したのではないかと思います。

その嬉しい始まりと同時に、セラピー業界では、日本特有の課題も見られるようになりました。
それについては私の次のブログでお話しするとして(笑)、まずは様々なセラピスト達の共通の世界観を記して、今日のブログを終えたいと思います。


| 日本の「セラピスト」たちへ伝えたいこと

セラピストという職業は、この世界への贈り物として生まれたと、私は感じています。
人が、人らしくあるために。
心と身体が、自然という大きな存在の一部であることを体感できるために。

その自然の治癒力の可能性を高め、健康を維持するのはもちろんのこと、私たちという「存在」そのものの意味や価値に気づけるために。
生き物としての、おおらかな生命の力を目覚めさせるために。
セラピーは、医学の延長線として発祥しました。
そして、医学とは異なる新たな世界観を育みなら、柔らかさや温かさ、穏やかさ、安らかさなどが溢れた手法に
よって人々に寄り添いサポートをする「セラピスト」という職業が生まれたのです。

そして私は、この「セラピスト」という職業と生き方を心から愛し、誇りに思っています。

きっと、このブログをご覧になっているセラピストのみなさんも同じだと思います。

今日のこの話題から、ぜひ心に留めて頂きたいのは・・・
「セラピスト」という職業が、医学の延長線として生まれたという事実です。

日本においては、明確な資格制度がなく、リラクゼーション業という分類の中で働いている、私たちセラピスト。
社会的地位も曖昧で、専門職としての認識も確立されてはおりません。

しかし、資格制度がないからこそ。
その制度に頼る代わりに。

ここで書いたようなセラピストの起源について理解を深め、職業的な意識を高めて、私たちセラピストの一人一人が、自らの意思によって立ち上がり、より専門的な高みを目指していくことが、この日本において求められているように思います。


そして、接客業やサービス業としてのカテゴリーではなく、医療従事者に準ずる「ヘルス プロフェッショナル」として仕事をするセラピストが日本において増えていくことを、私は、心から願っています。

そんな素晴らしい志をもつセラピストのみなさんのためにも、私は皆さんが、より広くより深く、この職業について理解していけるような興味深いブログを書いていきたいと思っています。

どうぞ、応援してください~^ – ^
それでは、次回のブログでお会いしましょう~♪

Rieko