こんにちは。MTI(マッサージセラピー・インスティテュート)学長の國分利江子です。
前編では僧帽筋のパルペーションに必要な骨の位置について解説しました。後編では、実際に僧帽筋の形状を浮き上がらせ、その線維を正確にパルペーションする技術について詳しく解説します。
ぜひ動画も併せてご覧ください。
肩こりの原因 僧帽筋の見つけ方
僧帽筋の起始部の確認
筋肉は必ず骨に付着しているため、前編で確認した骨の位置から筋肉の形を見つけていきます。
後頭骨での起始部
後頭骨の真ん中の外後頭隆起から、その外側に上項線が耳の後ろの方まで伸びています。僧帽筋はこの外後頭隆起から上項線の内側の部分に起始します。
僧帽筋上部線維の可視化
筋肉の形をはっきりさせるために、僧帽筋上部線維の作用を行います。
クライアントの頭の後ろ側を支えながら、首を後ろに引っ張るような動作をしてもらいます。そうすると、僧帽筋上部線維の一番首の外側の線維が角ばって見えてきます。
これを確認することで、外後頭隆起から上項線を辿り、頸椎の項靭帯に付着して胸椎の12番目までの起始部を確認できます。
僧帽筋の作用による形状の浮き上がり
筋収縮による可視化
筋肉の緊張を知るためには、筋肉の作用・動きを利用します。筋肉が収縮することで形が浮き上がってきます。
僧帽筋は皮膚のすぐ下にある筋肉のため、収縮すると表面からも形がはっきりと見えやすい特徴があります。深部の筋肉の場合は、収縮を指で確認することはできても、目視での収縮が見えない筋肉もたくさんあります。
背面伸展による確認
ウルトラマンが空を飛ぶような形、つまり背面で伸展という動きを行ってもらいます。そうすると、肩甲骨の内側縁の外側のところ、内側縁の真ん中よりも少し上のところ(実際には肩甲棘のところ)から斜めに降りる筋線維が見えてきます。
この時、脊柱起立筋群のラインも見えますが、起立筋も背中の伸展を行うため緊張しています。しかし、この起立筋の上に、僧帽筋の斜めに横切る筋線維がはっきりと見て取れます。
僧帽筋の停止部の確認
上部線維の停止部
僧帽筋の停止部は鎖骨の外側3分の1から始まります。肩の前側にある鎖骨の外側3分の1のところに付着部があります。
各線維の停止部
・上部線維:鎖骨の外側3分の1から肩峰まで
・中部線維:肩峰から肩甲棘を経て、肩甲棘が内側縁に停止するあたりまで
・下部線維:肩甲棘の内側縁のところから胸椎12番目(T12)まで
筋肉の線維は人によって多少違いがあり、はっきりと分かれているわけではないため、大体の位置として覚えておくことが重要です。
僧帽筋の特徴的な形状
僧帽筋の特徴は、後頭骨から首の中心、そして肩の真ん中あたりから前に行って鎖骨に停止することです。全体的には一枚皮になっていますが、この鎖骨の外側3分の1の部位だけはU字型になっています。
そのため、僧帽筋が緊張すると肩のトップのところが筋肉の収縮で厚みを帯び、肩が丸く硬くなるのです。
パルペーション技術の重要性
実際にパルペーションしていると、人によって線維の感触、膜がどのくらい被さっているか、厚みがあるか、そして同じ僧帽筋でも部位によって線維の硬さや緊張の質感が全く違うことが分かります。
一人の身体の中でもそれだけ違いがあり、違う身体だとさらにその違いが顕著になります。
筋解剖学の活用
基本のテンプレートとして、僧帽筋の位置が筋解剖学で頭に入っているからこそ、実際の身体に触れて見つけることができるのです。
筋解剖学のテキストは身体の地図のようなものです。地図が頭に入っていれば、実際にその道を辿ってそれを体験できるのです。
パルペーションは体感を使った作業
パルペーションというのは、そういう体感を使って実際に筋肉を見つける作業です。
テキストブックの上のものが、実際に自分が施術するクライアントの身体で見つかることは、本当にワクワクします。そのワクワクした実感のある状態で施術をするから、結果が出るようになるのです。
指の繊細さの向上
パルペーションをしっかりとできるようになることで、セラピストの指も変わってきます。どんどん繊細な指になってきます。
ソムリエが普通の人には分からないようなワインの香りや味が分かるよう、舌や鼻が出来上がっていくのと同じように、セラピストにとっては身体をパルペーションして、筋肉や骨を見つけられる指をつくることが本当に大事なのです。
まとめ
僧帽筋のパルペーション技術は、プロのセラピストにとって必須のスキルです。筋肉の作用を利用して形状を浮き上がらせ、正確な起始部・停止部を確認することで、効果的な施術が可能になります。
まずは今回の内容を参考に、パルペーションの練習を始めてください。継続的な練習によって、より繊細で正確なパルペーション技術を身につけることができるでしょう。
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私が学長を務めるMTI(マッサージセラピー・インスティテュート)では、アメリカのニューヨークにあるスウェディッシュ・インスティテュートで学んだマッサージセラピーを教えています。これは運動療法から発展して機能改善を目的としたアメリカ発のオイルマッサージです。このスクールには、不調の原因を理解し、お客様一人一人に合わせた質の高い施術をしたいという方が入学されています。
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