2025.05.16

 究極の施術ボディコントロール術(ボディメカニクス) 疲れない身体、最小の力で最大の圧を生むことが可能な身体の使い方!

こんにちは。MTI(マッサージセラピー・インスティテュート)学長の國分利江子です。

今回は、施術者の職業病を防ぎ、同時により質の高い施術を提供できるようになる「ボディメカニクス」についてお話しします。

究極のボディコントロール術(ボディメカニクス)

ボディメカニクスとは?身体の正しい使い方

ボディメカニクスという言葉をお聞きになったことはありますか?ボディメカニクスとは、ボディのメカニクス、つまり身体をどのように使うかということです。

オイルマッサージの施術において、このボディメカニクスを知っているかどうかで、大きく2つのことが変わってきます。

1. 疲れにくい身体づくりと職業病予防

まず一つ目は、身体が疲れやすいという状況が改善し、疲れにくくなることです。さらに、身体の疲労が職業病に発展することを防ぐことができます。すでに職業病で痛みを感じている方も、ボディメカニクスを学ぶことで改善が期待できます。

2. より質の高い施術の提供

二つ目は、無理に力を入れて圧を作り出す必要がなくなることです。特にディープティッシュのような、筋肉や筋膜の深いところまで圧を入れていく施術では、ボディメカニクスを知っているかどうかで大きな違いが生まれます。

正しいボディメカニクスを使いこなすと、無理な力で作った雑味のある強さではなく、本当に心地よい良質で深い圧を作り出せるようになります。

世界標準を超えるBMSボディメカニクス

世界中で一般的に教えられているボディメカニクスは、比較的大雑把なものが多いのが現状です。スウェーデンの大学でも、基本的な姿勢や移動方法など、簡単なことだけが教えられていました。

しかし私は、セラピストが長く仕事を続けるために、また良質な圧を作り出すために、ボディメカニクスは極めて重要だと考え、世界で最も詳細な研究を重ねてきました。

武道から学んだ身体技法

私は3年以上かけて武道を学び、小さな力で大きな効果を生み出す技法を研究しました。合気道や太極拳とは異なり、カンフーの動きがオイルマッサージに最適であることを発見し、この体系をベースに15年かけてBMSボディメカニクスを開発しました。

エフルラージュの基本姿勢と正しい身体の使い方

エフルラージュは、マッサージの基本となる手技であり、BMSボディメカニクスの基本姿勢を学ぶ上で最も重要な動作です。ここでは、より詳しく正しい姿勢と身体の使い方をご説明します。

よくあるNGな姿勢の詳細

多くの施術者が陥りやすい間違った姿勢には、以下のようなものがあります:

1. 腰に負担をかける姿勢

・足の位置を固定したまま、上半身だけで前後に動く
・上半身の重さが全て腰に集中し、特に戻る動作で腰に大きな負担がかかる
・わずか2回の動作でも腰に違和感を感じることがある

2. ねじり動作による負担

・横側に回って腰をねじりながら脊柱に向かって作業する
・エステティックの習慣から来るこの動作は、上半身と下半身にねじれを生じさせる
・脊柱全体をカバーするエフルラージュでは特に避けるべき動作

3. その他のNG姿勢

・お尻が後ろに逃げて、腰が反っている
・腹が前に出て、重心が崩れている
・肩が前に落ちて、猫背になっている
・首が前に落ちて、頭部の位置が崩れている
・膝が曲がって、力の伝達が妨げられている
・肘が曲がって、圧が分散している

正しい基本姿勢の作り方

1. 三角形の形成

・まず、マッサージを行う接触面の位置を決める
・その位置から、肩と腰の位置を正三角形または二等辺三角形になるよう配置
・この三角形が基本の骨格となる

2. 頭部と軸の配置

・肩から腰までの延長線上に頭部を配
・首から頭部まで、脊柱が一直線になるよう意識
・この軸が力の伝達経路となる

3. 後ろ足(軸足)の位置

・後ろ足は、身体の軸を支える重要な位置
・体重の大部分を後ろ足で支える
・前足はバランスを取るための補助的な役割

力の伝達メカニズム

BMSボディメカニクスの最大の特徴は、効率的な力の伝達システムです:

1. 力の発生から伝達まで

・後ろ足で地面を蹴る力が起点
・その力が膝を通じて腰へ移動
・腰の中心(仙骨)から脊柱へ
・脊柱を通じて肩甲骨、肩へ
・脇を締めることで、力が腕から手へと伝わる
・最終的に手のひらから臀部まで圧が伝達

2. 圧の質の変化

一般的な施術:

・開始時に圧が最大
・徐々に圧が減少
・最後は弱い圧で終わる

BMSボディメカニクス:

・開始時から一定の深い圧
・徐々に圧が増していく感覚
・最後まで深い圧を維持

重要な注意点

1. 体重移動の活用

・前足に体重を乗せすぎない
・後ろ足でしっかりと地面を捉える
・体重移動を利用して自然な圧を作る

2. 関節の使い方

・すべての関節を適切な角度に保つ
・特に手首、肘、肩の直線性を意識
・膝は適度に曲げて、力の伝達を妨げない

3. 呼吸との連動

・自然な呼吸を保ちながら施術
・力みすぎないよう、呼吸でリラックス
・クライアントの呼吸に合わせることも重要

実践的なポイント

  1. 再現性の確保
    ・何回行っても同じ姿勢を保てる
    ・毎回同じ質の圧を提供できる
    ・疲れにくく、長時間の施術が可能
  2. 圧の調整方法
    ・後ろ足の蹴る力で圧を調整
    ・身体の角度で深さをコントロール
    ・手や腕の力は最小限に
  3. 応用力
    ・この基本姿勢は、腰だけでなく全身の施術に応用可能
    ・全腕を使った施術でも同じ原理を適用
    ・他の手技への移行もスムーズに

正しいBMSボディメカニクスを身につけることで、施術者は疲労を最小限に抑えながら、クライアントに深い満足感を与える施術を提供できるようになります。この技術は、一度身につければ一生使える、施術者にとっての財産となるでしょう。

BMSボディメカニクスで実現できること

正しいボディメカニクスを身につけることで、以下のような効果が得られます:

圧の質と量の向上

・圧の量を3〜4倍に増やすことが可能
・施術の最初から最後まで一定の圧を維持
・筋肉だけでなく深筋膜にもアプローチ可能

施術者の身体への効果

・疲労の大幅な軽減
・職業病の予防と改善
・長期的なキャリアの継続が可能

各種手技への応用

BMSボディメカニクスは、エフルラージュだけでなく、様々な手技に応用可能です。それぞれの手技について、具体的な身体の使い方をご説明します。

マーセル ストリッピング

親指を使ったマーセル ストリッピングでは、筋肉の際の部分にピンポイントで深い圧を入れていきます。

NGな姿勢:

・腕の力だけで圧をかける
・手首が曲がっている
・圧が徐々に弱くなっていく

BMSボディメカニクスでの正しい方法:

・親指、手首、腕を一直線に保つ
・後ろ足で地面を蹴った力を利用する
・圧が徐々に増していくような感覚で施術
・指が寝ないよう注意し、手首や腕に余分な力を入れない

これにより、施術者の負担を軽減しながら、より深く効果的な圧を維持できます。

フリクション(摩擦法)

フリクションは、繰り返しのあるリズミカルな動きが特徴です。前方向だけの移動ではないため、下半身のボディメカニクスに変化が生じます。

ポイント:

・上半身の基本姿勢は維持
・立ち位置を若干短くする
・リズミカルな動きに合わせて下半身を使
・重心の移動を意識する

4本の指を使ったフリクションでも、基本的なボディメカニクスの原則は同じです。身体全体を使って動きを作ることで、持続的で疲れにくい施術が可能になります。

ニーディング(練捏法)

ニーディングもフリクションと同様に、繰り返しのリズムがある手技です。

特徴的な動き:

・基本姿勢は他の手技と共通
・リズミカルな動きに合わせた下半身の使い方
・立ち位置をやや短めに調整
・上半身は安定させたまま、下半身でリズムを作る

手の動きだけでなく、身体全体でリズムを作ることで、一定の圧とリズムを長時間維持できます。

スクイージング(絞扼法)

スクイージングは筋肉を持ち上げて絞るような動きをする手技です。

BMSボディメカニクスの応用:

・基本姿勢を維持しながら動作
・下半身の力を使って筋肉を持ち上げる
・腕だけでなく、身体全体の動きで圧を作る
・重心移動を活用した効率的な動作

共通の重要ポイント

すべての手技において共通する重要な要素は:

  1. 基本姿勢の維持 – 肩、腰、頭の位置関係は常に保つ
  2. 後ろ足の活用 – 圧は後ろ足で地面を蹴る力から生み出す
  3. 全身の連動 – 手や腕だけでなく、身体全体を使う
  4. 直線的な力の伝達 – 手首・腕・肩を直線に保ち、効率的に力を伝える
  5. 重心移動の活用 – 身体の移動を利用して自然な圧を作る

これらの原則を理解し、各手技の特性に合わせて応用することで、疲れにくく、かつ効果的な施術が可能になります。BMSボディメカニクスは、施術者の身体を守りながら、クライアントにより深い満足感を提供するための総合的なシステムなのです。

BMSボディメカニクス習得のためのエクササイズ

実は、BMSボディメカニクスの理論を学ぶだけでは十分ではありません。正しく身体を使うためには、専用のエクササイズが必要です。

私は、BMSボディメカニクスを効果的に習得するための独自のエクササイズプログラムを開発しました。このエクササイズを実践することで、理論と実践が結びつき、より効果的な施術が可能になります。

まとめ

BMSボディメカニクスは、施術者の身体を守りながら、クライアントにより質の高い施術を提供するための重要な技術です。BMSボディメカニクスは、世界で最も詳細に研究・開発されたシステムであり、論理的でありながら感覚的にも習得しやすいのが特徴です。

正しいBMSボディメカニクスを身につけることで、疲れにくい身体づくり、職業病の予防、そして良質な施術の提供が可能になります。これは施術者自身の健康とキャリアの継続、そしてクライアントの満足度向上につながる、まさに一石二鳥の技術といえるでしょう。

MTI(マッサージセラピー・インスティテュート)では、このBMSボディメカニクスを含む包括的なマッサージセラピー教育を提供しています。詳しくは当インスティテュートのウェブサイトをご覧ください。

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